第2章 1-aでは愛してるよゲームが流行ってるみたいです
「最原くん、愛してるよ!」
赤松さんが僕を見つめて、唐突にそんな言葉を口にした。
僕はよく意味がわからなくて、無駄にあわあわとしてしまった後、結局聞き返すことしかできなかった。
「ど、どうしたの赤松さん」
「え、知らない?最原くん。愛してるよゲーム」
「ゲーム?」
はて。
なんだろうその危ない雰囲気のするゲームは。
僕の表情を眺めていた赤松さんが、「本当に知らないの!?私すごく恥ずかしい人だね!!」と顔を真っ赤にして机に突っ伏してしまった。
「愛してるよゲームっていうゲームがあるの?」
「う、うん…最原くんは動じてないね…ありがたいような、悲しいような複雑な気分…」
「え?」
「愛してるよゲームっていうのはね、片方が愛してるよって言って、相手を笑わせたりにやけさせることが出来たら勝ち。愛してるよって言われた方は、何回も「もう一回」って聞き返して、相手が耐えきれなくなったら勝ち」
「勝ち負けもあるんだ。…じゃあ僕は赤松さんに勝負を挑まれてたってこと?」
「別に挑戦状叩きつけたつもりじゃなかったんだけど、最原くんどんな反応するかなー…なんて…」
赤松さんはまた赤面して、口元を両手で隠してしまった。
そんな彼女の様子を見て、愛してるっていう側は確かに恥ずかしいな、と考えた。
「でもそれって何も言わずに始めたら危険なんじゃ。相手が本気にしたらどうするの?」
「う、うん、そうだよね、ごめん」
「あ、僕は全然大丈夫だけど」
「…うん、全然揺らいでないよね…」
「え?…ごめん、期待したリアクションじゃなかったみたいだね」
「なんでもない大丈夫、私の浅知恵のせいだから…!」
赤松さんの顔から生気が抜け落ちていく。
疑問に思い、もう一度聞いてみようとしたところで、僕の座る席の隣に立つ人影に気づいた。