第1章 YOURNAME【明智光秀】 【R18】
それに、最近では“たわいない話”もするようになって、私が散々疑問に思っていた“あること”の理由もわかった。
「桔梗、お前の教材はどこの書店で買っているものだ? 花柄だったりチェックだったり、変わったブックカバーだから気になった。」
「あ、このブックカバーは包装紙で自分で作ってるんです。」
「?自分で作っている……?」
「はい、ちょっと前にデンマーク語の教材に書いてあったんですけど、デンマークの人は “ヒュッケ”っていって、自分の心地いい空間を作る習慣があるみたいなんです。例えば身の回りに好きなものを置くとか、スマホの背景に自分の好きな写真を設定するとか。
それっていいことだなーと思って。だから、少しでも勉強に前向きになれたらいいな、と思ってブックカバーをかわいくしてるんです。」
「ほう、それなら俺もしているな。
この家もいつでも調査に行けるようにアクセス重視で選んでいるし、仕事に集中できるよう極力部屋に余計なものは置いていない。
さらにいえば服や食事も選ぶのが面倒だから、同じものを複数買いしてローテーションしている。」
「え、それってヒュッケなんですか?……」
「“自分の居心地のいい環境をつくる”のが定義なら、間違いではないだろう?」
うん、間違ってないけど、やっぱり政秀さんはだいぶ変わってるかも。
でもそんな時間が楽しくて、いつの間にか私は仕事なのにもかかわらず政秀さんと過ごす時間が楽しみになっていた。
目標の1,000万円まで、あと100万円をきっているのに……。