第5章 ⇒OURNAME(後)【明智光秀】【R18】
車に乗せられたとき結構乱暴に腕を引かれていたけど
どこかに連れてかれて、なにか暴力でも受けていたら
もし万一のことがあったら……
もし……いや、思考は現実になるっていうからこれは考えちゃだめ。
先ほどの心配が解決したかと思いきや
それよりもさらに重い不安に駆られて苦しくなる。
≪でも、役所が開いているうちに戻るって言ってたし……≫
光秀さんは今まで1回も約束したことを裏切る人じゃなかったから。
とりあえず区役所が閉まる17:00までは待ってみよう。
そして、もし、もし戻らなかったら……
自分が持っている名刺フォルダの一番始めのページを眺める
≪この会社に連絡しよう……≫
『このご時世なのに、社員旅行もあれば飲み会もある。
まったくアナクロニズム極まりない会社だ』
と言っていたこの会社。
『特に秀吉は、人の世話を焼き過ぎだ。』
どうやら実質この会社で権力を持っている「トヨトミさん」という人とは
特に光秀さんは気が合わないらしい。
たしかに……光秀さんはちょっと変わってるし
政宗とは違った意味で「自由にしてないと嫌なタイプ」だとは思うから
「管理する」ってなったらちょっと険悪にもなっちゃうのかも……。
でも、そもそも光秀さんがほかの会社のお仕事について
私に話してくれたことなんてほぼないし、
こぼす言葉はどちらかというとマイナスではあるけれど
この会社……Sengoku Agentについて話すときの光秀さんの顔は
いつもどことなく緩んでいるから……
きっと光秀さんにとって大切な場所だろうから……。