第5章 ⇒OURNAME(後)【明智光秀】【R18】
えっ……光秀さんのお知り合いなの?
戸惑った様子で光秀さんを見ると、ちょうど目が合う。
光秀さんは『安心しろ』というように優しく私の髪を撫でると
その人の方に向き直った。
「何か用か。
生憎だが、今は手が離せない。
すぐそこの役所に用がある。
何、逃げたりはしない。
1時間ほど待ってもらえるか。」
「それは承れませんね。
弊社の秘密を漏洩したあなたの言葉を信用するわけにはいきません。
いますぐついてきていただけますか?」
秘密……?
漏洩……?
ニュースでしか聞いたことのない言葉に耳を疑いながら恐る恐る光秀さんを見ると、
初めて会ったときのような“どちらともとれない表情”を浮かべている。
その表情がさらに私の不安を加速させる。
「……やれやれ……。
梨沙、一度俺の家に戻っていい子にしていろ。
役所が開いている間に戻ると約束するよ。
……朝でもこのあたりは危ないからな。」
「お取込み中すみませんねお嬢さん。
社長の命令ですから。
それでは、失礼いたします。」
「え……」
私が引き留める間もなく、男性は光秀さんの腕を引いて先ほどの車に押し込む。
それこそ刑事ドラマで犯人が逮捕されるような光景を、
ただただ私は眺めていることしかできなかった。