第4章 ⇒OURNAME(前)【明智光秀】【R18】
「お前を連れていきたいところがある。」
式やその関連行事が終わって合流したのち、俺は梨沙を連れてある場所に向かっていた。
川沿いの規則的にベンチの置かれた川沿いの遊歩道だが、特別な場所でもある。
そこは、2年と3ヶ月前、俺が梨沙に告白した場所だからな。
「袴のことも、式に出席してくださったことも本当にありがとうございます。」と満面の笑顔で繰り返す梨沙を見ていると、さきほどまで抱いていた大人の女の印象が多少薄らぎ、その代わりにいままでずっと見てきたあどけなさを感じる。
≪やはり梨沙は梨沙だな≫
そう思いながら遊歩道のなかほどにある川が見えるベンチに座って問いかけた。
「梨沙、ここを覚えているか?覚えているなら言ってみろ」
「はい……もちろんです。
……光秀さんに告白してもらった場所だってこと、覚えてます。」
顔を真っ赤にしてうつむきながら答える姿は、いつも俺が知っている梨沙そのものだ。
おもしろいくらいにわかりやすく戸惑ってくれるから、ついついもっといじめたくなるが、今日は“本題”があるのでいじめるのはここまでにしておく。
「大学生活は楽しかったか?」
「はい。楽しかったっていうと、ちょっと違うかもしれないですけど、充実してました。
都心の物価もぜんぜんわかってなくてお金に困ってたから麻衣子たちみたいに遊べなかったし、
結局バイトしながら勉強してたから時間も体力もなんかギリギリだったこともあったけど、
必死だったから勉強も楽しく感じたり、私ここまでできたんだーって、ちょっと嬉しくなったりして。
……それに光秀さんにも会えたし、一緒に勉強するのも楽しかったです。
4月からお仕事なのがちょっと寂しいです……。」