第4章 ⇒OURNAME(前)【明智光秀】【R18】
ー……
珍しく俺に頼みごとをすると思ったら……そういうことだったか。
梨沙の大学に併設しているホールの舞台で、学長から卒業証書を受け取る梨沙を見て納得した。
ときは2月の半ばまで遡る。
「光秀さん、お願いがひとつあるんですけどいいですか?」
いつも通り自宅で向かい合って勉強しているさなか、普段はめったに(というか全く)自分に何かを頼んで来ることのない梨沙が突如こう切り出して来たのだ。
ここのところ毎回会っても自宅ばかりだからついに飽きたか、それとも何かどうしても必要なものがあるのだろうか、そんなところだろう。
「なんだ。俺にもっといじめてほしいのか。」
「それはもう十分足りてますっ……もう。
……あの……3月25日の卒業式、見に来てもらえませんか?
あっ、忙しかったら全然っ……大丈夫なので。」
血縁者でもない自分に式に出席してほしいとはどういうことかとは思いつつも、一応普段は着ないスーツを着て出席したが。
梨沙が毎日こつこつ努力していることは知っていたが、まさか首席とはな。