第4章 ⇒OURNAME(前)【明智光秀】【R18】
しかし、所定の場所に来てはみたものの、そこは新宿の路地裏のよくわからない雑居ビルの前だった。
いつもデートをするときも光秀さんは人目につかない場所を待ち合わせ場所に設定するから、場所自体に不安は感じていなかったが、いつもは自分よりも先に待ってくれていた光秀さんはその場所にまだ来ていなかった。
≪光秀さんも毎日忙しい方だもの、こういうときもあるよね。
そもそもまだ待ち合わせの時間までに5分あるし……。≫
光秀さんがこの場にいないだけでこんなに落ち着かなくて、周囲の風景も怖く感じる。
私ってこんなに弱かったんだ……。
スマホをいじって気を少しでも紛らわそうとしたそのとき、
「泉様、泉梨沙様でお間違いございませんか?」
背後から聞きなれない女性が私の名前を呼んだ。
「はい、そうです……」
「初めまして。私、株式会社OSHINの三菱と申します。
本日は明智様からご依頼を承っております。このビルの3Fまでついて来ていただけますか?」
「え、明智さん……ですか?」
私に名刺を差し出しながら三菱さんはこう続ける。
ちょっと不信感はあるけれど、明智さん……光秀さんから依頼を受けているって言っていたから変なことはされないだろう……そう信じて3Fのテナントにたどり着く。
「こちらへどうぞ」
彼女が鍵を開けてドアを開けると、目の前に嘘みたいな光景が広がっていた。