第4章 ⇒OURNAME(前)【明智光秀】【R18】
「ん?……そういえばそうだったね。
あ、でも友達に聞いてみたら袴着ないって子も多いみたい。
私もドレスで出るから大丈夫だよ。」
負担をかけたくない、そんな気持ちから苦し紛れの嘘が自然と出た。
「え、本当にそうなの?無理はしていない?
着たいなら私たちに気を遣わないで、着てほしいんだよ。」
母だけではなく祖母や祖父もそういってくれたけど、初日の母の疲れた顔を思い出すと首を縦には振れなかった。
それに、来年は弟の大学受験も控えてるし。
私のときも結構大変そうだったから絶対ダメ。
「ううん、大丈夫。私も今の今まで忘れていたくらいだからさ。
気にしてくれて本当にありがとう。」
笑ってそういうとみんなどこか納得したような諦めたような様子で説得をやめてくれた。
「少しでも着たいと思ったら、遠慮なく相談するんだよ。」
***
その日、自分の部屋のベッドのなかで、目を瞑りながら思い浮かんだのは卒業式の袴のことだった。
≪もしかしたら、お金云々ではなくて、私が袴を着た姿をお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも見たがっているのかな……»
だとしたら、私はみんなの希望を叶えられていないな……でもだからといって家族に負担をかけるわけにもいかないし。
BOTANICAL GARDEN時代にためた1,000万円は幸いなことにほぼ手付かず。
そして現在のカフェのバイトで貯めた貯金も追加されているから貯金はそれなりにあるからここから出そうかな……
そんなことを思っていると知らず知らずのうちに私の意識は遠くなっていった。