第4章 ⇒OURNAME(前)【明智光秀】【R18】
盛岡駅からさらにバスに乗って30分ちょっと、夜になると街灯もまばらで、スマホの電波もちょっとつながりにくくなるくらいの片田舎に私の実家はある。
年金暮らしの祖父母と母と高校生の弟の4人が暮らしている家は、田舎だからある程度広いけれど、築年数がそれなりに経っている。
また家の働き手は母だけなので、そして弟の大学入学が控えているから決して家計は楽ではない。
だから、就活をはじめてしばらくは「実家の家計も厳しいから、実家に戻ろうかな」とも思っていた。
でも、こっちには通訳の仕事も家計を支えられるような仕事もなかったから都内で働くことを選んだわけだけど……。
就職したら、少しずつでも実家に仕送りして恩返しができたらいいなと思っている。
「ただいま。」
「お邪魔いたします。お久しぶりですがお元気そうで何よりです。
あとこちら、つまらないものですがみなさんで召し上がってください。」
「あらあら梨沙、お帰りなさい。
光秀さんも、いつもありがとうございます。
そして毎回こんなに気を遣っていただかなくても大丈夫なんですよ。」
お昼には遅いけど夕方というには多少早い時間に玄関の引き戸を開けると、いつもどおりすぐに母が出迎えてくれた。
まもなく祖父・祖母と弟も「おかえり」「元気にしていたかい?」と私たちを出迎えてくれる。
みんな元気そうにしてくれていて何よりだけど、少し母の表情が疲れているのが気になった。
2週間ほど前にたわいないことでLINEをしたとき
『来年は(弟が)大学受験だからね、もっと頑張って働かなくちゃね』
って返してたから疲れたように見えているのかな……。