第4章 ⇒OURNAME(前)【明智光秀】【R18】
でもそうはいっても、光秀さんと私の付き合い方はもしかしたら“カップルらしい”とはちょっと違うかもしれない。
『キャンパスにとんでもないイケメンがやってきて、ドイツ語学科の泉を連れ出した』
(※デンマーク語はドイツ語学科の選択科目なので学科はドイツ語)
1年半前のあの“事件”は、今でも学内ではちょっとした伝説になってしまっている。
付き合って長くてもひいき目なしに綺麗な光秀さんだから、伝説になってしまっているのは仕方ないかな……とは思うけど、同級生にも先輩にも後輩にも『私=彼氏がすごいイケメン』って覚えられているのはちょっと気が引ける。
そんなことだからもちろん「彼氏との話を聞かせて」というのは私に対する鉄板の質問になっている。
でも、みんなに話せるような“自慢できそうな話題”も“面白い話題”は私たちにはないのだ。
麻衣子に言わせれば“どこまでもインスタ映えしないカップル”らしい。
大学生女子のえげつないガールズトークのネタになりがちなSEXの話も、付き合う前に"接客"でして以来私たちにはない。
というのも付き合った初日にキスをしたあと光秀さんに言われたのだ。
「この先は、お前が大学を卒業するまで“お預け”だ」と。
だから“その日”から今日まで、私は光秀さんと“キスより先”をしていない。
それどころか光秀さんとは大学の友達のカップルのような“鉄板デート”にすら行ったことがない。
テーマパークや買い物に行かないのはもちろん、盛大にお互いの誕生日や記念日、季節のイベントを祝うってこともない。
デートの半分くらいは光秀さんのお家で光秀さんはお仕事、私はその向かいで勉強みたいな感じ。
外に出るっていっても、近場できれいな庭園を見に行ったり、隠れ家的なカフェでお茶したり、図書館で場所を変えて勉強したり。
『たしかに、光秀さんとのデートをインスタにアップしても絶対にいいねはつかないよな』と麻衣子のセンスに感心しちゃうくらい“インスタ映えしないカップル”はピッタリだ。