第1章 YOURNAME【明智光秀】 【R18】
しかし、奨学金をもらって学費はなんとかなっているものの、私は親に生活費の援助を頼めない。母は弟との暮らしを守るので手いっぱいだ。
だからといって生活費を稼ぐためにバイトばかりに明け暮れていたら、通訳の試験には受からない。
勉強もしなければいけない、お金も稼がなければいけない。しかし時間は限られている。
だから……バレるかもしれないというリスクを背負ってでも私はこの仕事を選んだ。
バレないように最善の策も尽くしていると思う。
事前にそういったお店のことを調べて客層がよいといわれているこの店を選んだし、普段学校にいるときとは全然違うメイクをして、髪型も変えて“別人”に成りすましているつもりだ。
そして、褒められたものではないが一応目標もある。
それは「お給料の3割で生活して7割は貯金する。そして1,000万円貯めたら、しっかりこの仕事はやめる」ということだ。
お店のオーナーの花咲さんいわく「この仕事をやっている女の子は、あまりに簡単に多くのお金を稼げてしまうから、ずるずると続けてしまってその結果路頭に迷う」のだそうだ。
この仕事を始めてから本当に思うけど、それはその通りだと思う。
何も考えないでずっとここにいたら……通訳の夢なんてどうでもよくなっちゃうのかもしれない……そう考えるだけでちょっと怖い。
だから……私が私であるためにもこの目標は絶対に守っている。
その結果1,000万円まで、残り250万円のところまで……あと少しのところまで来ている。
お金が溜まったらしっかりやめて、しっかり勉強する。
私が私であるために。