第2章 St.Valentine SS 【政宗・光秀・謙信】
今日もいつも通り、自分の体力の限界まで 梨沙 を抱いた。
梨沙 は自分の対液まみれになって意識を飛ばしている。
「 梨沙 のこの姿は己だけのものだ」……そんなエクスタシーを最も感じることができるからこの時間は好きだ。
梨沙 の隣に寝そべって髪を撫でていると、ふと先ほどもらったチョコレートに目が行った。
「甘いものが苦手だからビターにして、中に日本酒を入れた」と言っていたその塊を口に入れると、たしかに甘味はほぼない。
見た目はこれほど甘そうなのに、口に広がるのはビターのほろ苦さと、日本酒のアルコール感。
このチョコレートは、 梨沙 ……お前のようだな。
お前はその愛らしい姿に反して、愛しているからこそお前のすべてを所望する俺の気持ちを容易く裏切る。
いくら行動を制限しても、「自由が欲しい」と訴え
何度自らの精を注ぎ込んでも、他の男のいる場所に何の躊躇もなく立ち入り
俺だけを愛するように仕向けているのに、このチョコレートを渡すときも「いつもありがとう」と告げる。
それでいて、時としてお前は俺をとてつもなく魅了する。
どれだけ俺がお前を束縛しても俺を避けるわけでもなく
行為の最中だけは惜しげもなく俺に「愛している」と言い
今回のバレンタインにはまぎれもなく“俺のため”にチョコレートを作るのだから……
だから“それ”を味わった俺は、これ以上ないほど苦い思いをするのを知っているのにもかかわらず、酒に酔ったように正常な判断力を持ち合わせないがゆえにもっともっとと“それ”を求めるのだ。
屋敷の大きな窓から空を見ると、空に浮かぶ月は冷ややかに、しかしまっすぐと俺を見つめていた。
謙信編:FIN