第2章 St.Valentine SS 【政宗・光秀・謙信】
謙信編:
謙信目線
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平日19:00
門限の時刻だというのに、玄関の扉はまだ開かない。
「さんざん身を以て仕置きをしているというのに、まだわからないようだ……。」
いつも通りスマホのGPS情報を参照し、専属のSPを使って、梨沙を強制的に連れ戻そうとしたちょうどそのとき、勢いよく玄関の扉が開かれた。
高めのヒールにミニ丈のスカート、赤文字雑誌のモデルのような容姿。
その姿を見た瞬間、己の元に戻ってきたという安心と、何度行為を重ねても己の思い通りにならない 梨沙 へのいら立ち、さらにはその姿を今日はどれだけの男に見せたのだという激しい嫉妬が一気に混ざって、呼吸が苦しくなる。
「4分オーバーだ……お前は何度言ってもわからないようだな。
お前の時間もお前の身体も……すべて俺の管理下にあるということが。」
その華奢な体を衝動のままに腕に抱きすくめて噛みつくようにキスを落とす。
「んんっ!……ふっ……お兄様……今日は違うのっ」
そうキスの合間に俺に伝える優香の息は切れている。
≪……俺をここまで苦しめて、お前は何がどう違うというのだ≫
ただし、いつもと違う部分も確かにあった。
いつもは、門限が早いだの、もっと自由にしてだの文句のひとつでもあるはずなのにそれがない。
理由の有無で対応を変えるつもりはないが、一通り 梨沙 の口内を味わいつくした後「聞いてやろう」というように一度その身を解放してやる。
すると 梨沙 は持っていた小さな紙袋を俺に渡してきた。
「麻衣子の家でこれ作ってて……私不器用だから 麻衣子 に教えてもらってたんだよ。お兄様……いつもありがとう。」
「?……これは……」
「今日はバレンタインだから。お兄様、甘いの好きじゃないって知ってるからビターにしたし、日本酒を入れてみたよ。」
「そうか……これはありがたく受け取っておこう……。」
そういえば今日はそんな日だったな。
社内の商品でもいくつかバレンタインキャンペーンを打っているものがそういえばあったな、と思い出す。
「だが……仕置きは受けてもらおうか。」