第2章 St.Valentine SS 【政宗・光秀・謙信】
「ほう……ビスケット生地でチョコレートを包んでいるのか……これは食べやすい」
一粒口の中に放り込むとビスケットのサクサクした食感と抹茶のふわっとした香りが口の中に広がった。
「はい。光秀さんっていつもPCでお仕事なさっているので。
手が汚れたり、マフィンみたいなこぼす可能性のあるものじゃ邪魔かなと思ったんです……。」
「味は、抹茶か?」
「はい……いつもお茶がこのお宅には用意されているので、お好きなのかなと思って。」
はっきり言ってやはり味はよくわからない。識別できるのは食べ物の色や食感くらいだ。
だが、自分の生活環境や好みを考えて作ってくれた梨沙の気持ちを感じたからなのか、それは間違いなく“美味しかった”。
そして、目の前で話すこの娘を愛おしいと思う気持ちも、さらに大きくなった。
「梨沙……」
自分の席を立って梨沙の隣に移動すると、梨沙の目線に合わせるように屈んで梨沙の目を間近で見る。
「……ありがとう、やはり味はわからないが、美味しかった」
その言葉で真っ赤に頬を染める梨沙がかわいくて、そのまま軽くキスをして抱き寄せた。
そのまま耳元で続ける。
「梨沙、お前は本当に愛らしいな。そんな顔をされたら歯止めが利かなくなるだろう……
お前が大学を卒業したら、いっぱいいじめていっぱい甘やかしてやるから、それまでは“おあずけ”だ。」
「はい……光秀さん、ずっとそばにいてくださいね。」
返事をする代わりに、梨沙の身体を抱きしめる力を梨沙が壊れないように少しだけ強めた。
光秀編:FIN