第2章 St.Valentine SS 【政宗・光秀・謙信】
―……
そして空が白んできたころ……
「できたー。なんか今までの人生で作ってきたなかで一番おいしそう!政宗ほんとにありがとー!」
かねてか私が作ろうと思っていたマシュマロナッツチョコは、某レシピサイトの写真よりもずいぶん出来栄えよくできていた。
政宗が作ったチョコはダイヤカット型のチョコレートだけど……面によって転写が入っていたり入っていなかったり、チョコ自体もイチゴチョコだったり抹茶チョコだったりと、既製品ばりのクオリティを発揮している。
「俺が教えたんだから当たり前だろ。……で、俺にくれるんだろ?食わせろよ」
こういうときの政宗は反論してもきかないから、大人しくチョコを手で持って政宗の口元に持っていく。
「はい、あーん」
「違う……手じゃなくて口でしてみろ。」
「!?……」
「手本、見せてやろうか?」
そういうと政宗は自分が作ったチョコレートを咥えてそのままキスをする。
「んっ……」
キスと一緒に与えられたチョコはイチゴ味。中にはベリーのドライフルーツが入ってて……甘酸っぱくてすごいおいしいけど、これがほんとにチョコの甘さなのかそれとも政宗のキスが甘いのかよくわからない。
“チョコの食べさせ方の見本”だったはずなのに、政宗の舌が私の口内に入ってきて目的も置き換えられて……でも、抵抗できない。
政宗のことが大好きだから。
「ふぁっ……もういきなりするんだから……でもすごいおいしい……」
唇を離されたとき、私の顔には無意識に笑顔が広がっていた。
「素直でよろしい。……じゃ、次はお前の番な。」
素直に「うん」と答えて、バー型のチョコレートの端を咥えて政宗に近づきながらこう言った
「ははふへ、はひひへふ」
≪チョコ咥えてれば、ちゃんと発音できないから恥ずかしさもちょっと消えるもんね。≫
「……なんだって?……食べ終わったらもう一回それ言えよ、梨沙。」
そんな政宗の表情は意地悪で、絶対私の言葉を理解してる。
私が首を横に振る間もなく政宗の唇が重ねられる。
政宗のチョコには敵わないけど、自分が作ってきた中では圧倒的においしいチョコの味が口の中に広がった。
≪今年より来年、来年より再来年……もっとチョコが“おいしく”なればいいのに≫
チョコを“おいしく”するのに必要なのは……?
END