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【イケメン戦国】 EXTRA BOX

第1章 YOURNAME【明智光秀】 【R18】


―……


あの日桔梗と別れてからも、“彼女”は俺の心に棲み続けた。


いないからといって集中力やパフォーマンスが下がるわけではない。
だが、もうあの店にコールをしても、あの嬢らしからぬ誠実さや素直さを持った娘には会えない。そう考えると心の片隅がくすぶった。


そして、あの夜…… 十中八九寝言だ。限りなく可能性は低いだろう。

しかし「好き」と言ってくれたその気持ちに嘘偽りはないのかを知りたかった。
そして、


≪もしその気持ちが“真実”なのだとしたら……あの娘の幸せを最も近い場所で願いたい。≫


この気持ちを抑えることができなかった。

だから、初めて俺は己のスキルをビジネスではなく“私欲”のために使った。

「挑めば立場を一時失うが、挑まねば己を失う」。

デンマークの哲学者、キルケゴールの言葉だがよく言ったものだ。
まさに……たった一人の小娘のために奔走するなんてそれまでの自分の立場からしたら考えられないことだ。
だが……やらないという選択肢をとることは、できなかった。


記憶のかぎりに彼女の情報を整理する。
俺に接客をするとき、彼女の装いは常にどちらかといえば派手だった。
だが、普段はむしろ桔梗の花言葉のように清楚なのだろう。
時折ギャル特有のルビーレッドのリップの下に、どちらかというと清楚な女性がつけるローズピンクのリップの痕が残っていたことや、
コテで髪を巻いている割には毛先が傷んでいなかったことから推測ができる。


そして在籍場所……デンマーク語の通訳になりたいというからには語学系の大学や専門学校に通っているはずだ。
だが彼女が取り組んでいるテキストを見る限りそこまで難しい内容でもなさそうだったので通訳の専門学校ではなく、まだ大学で履修しているというところだろう。
確かテキストの名前は……ブックカバーで隠れて見えなかったがこんな名前だった。


21時から翌9時までの12時間指名したあとも“学校に通学できている”ということは新宿からそこまで距離のない学校
偏差値も、これはただの勘だがきっと悪くはないはずだ。


“都内にあるデンマーク語が履修できるそこそこの偏差値以上の大学で、あの教科書を使う講師の授業の前後に、最も学生が集まりそうな場所で彼女を待つ”


俺にできるのはこれぐらいだろう。
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