第1章 YOURNAME【明智光秀】 【R18】
―……
「目標が無事達成できたので、今日で私、BOTANICAL GARDEN TYOを卒業させていただくんです。」
いつかその日が来るとは覚悟していた。
しかし、その日はあまりにも突然に訪れた。
その言葉を聞いてまずは安心した。
初めて会った日から思っていたが、桔梗はこの世界にいるには、あまりに誠実すぎる。
あの勉強への集中具合や接客態度からして、この仕事を選んだのにもそれなりの事情があったのだろう。
政宗を振った理由も今なら容易に想像がつく。おそらく目先の利益よりも客のことを考えたのだろう。
だからこそ……早く普通の生活をさせてやりたくて、毎回指名していたのだから。
その一方で桔梗を呼ぶにつれて自分の中に桔梗を抱きたいという、どす黒い感情が増長するのも感じていた。
この気持ちも最後まで抑えるつもりだった。
しかし、あまりに思っていたよりも早くその時が訪れたからなのか、自分でも信じられないほどこの感情が早く広がった。
……俺はここまで欲に弱かっただろうか。
シャワーから上がると桔梗は初めて会ったときのように、ベッドの隅にちょこんと座っていた。
そして初めて会ったときと同じように、なんとなく戸惑っているのもわかった。
本来は“客”の立場上、そんな様子は気にすることはないかもしれないが、桔梗を安心させてやりたくてまずは桔梗の隣に座る。
「お前は……仕事だというのに緊張しているのか?」
「そ……そんなことないです」
そっと指先で桔梗の顎を持ち上げ目を合わせたあと、わざと煽るようにゆっくりキスをする。
唇が触れた瞬間にぴくっと身体を震わせて硬直する桔梗の姿は、本当に他に客をとっているのかと思うぐらい初心だ。
「嘘をつく悪い子にはお仕置きだな……桔梗」
触れるだけのキスから時間を徐々に伸ばしていって、そこから舌を入れてお互いの唾液を交換する。
深いキスをしながらそのまま桔梗も自分もベッドに身を沈めていった。