The night dream of fairy【気象系BL
第12章 無償の愛
一方、翔と和也は智が連れ去られた後…
翔は、和也の傷にハンカチを巻いてやった。
「こんな傷どうってことないのに…」
和也は、手当してもらった所を
嬉しそうに見ながらつぶやいた。
「翔兄は大げさですよ。
まぁ~こんな傷なんて
自分で治す価値もありませんけどね」
なぁ~んて、強気な事を言っているが
本当はさっき、智の傷を治した時に
自分の力を、全部使い切ってしまったことに
翔は気づいていた。
弟の事なんか、全てお見通しだったのだ。
だから二人は、本当はすぐにでも
智の所に向かいたいと思う
気持ちをグッと我慢して
一度家に帰ってきた。
玄関で風間が
「おかえり、あれ?
今日は雅紀と一緒じゃないんだね…」
「………」
「また、友達の所にでも行ってるのかな?」
二人は雅紀の事は、風間に何も伝えることは出来なかった。
二人はソファーに座ると
室内は静寂に包まれた。
いつもなら家の中には、雅紀がいて
侑李がいて…それに寄り添うように涼介が居たのに
でも今は、誰もいない…。
どちらからか、深いため息が聞こえた。
和也は翔の顔を見ると
「翔兄?これからどうするの?」
翔は、ポケットから古い写真を取り出した。
「これは、この前犯人から聞き出した
組織の酒場の天窓の所で見つけたんだ…」