第1章 好きです。
「あ、やっと開けてくれた。
書類が重くて肩凝っちゃうところだったよ?」
「煩ェ。
てめェはそんなもんで肩凝るようなヤワな身体してねェだろ。
入るならさっさと入れ」
兵長が身体をずらし、道を開けた。
「あれ?
見ない顔...新兵?
リヴァイついに男色に目覚めたの?」
駆け寄り、俺の顔を覗き込む。
「あ?
つまんねェ冗談言うんじゃねェ、削ぐぞ」
「し、しし、シズクさん!?」
そう。
兵長の部屋を訪ねて来たのは、俺が入団してからずっと想いを寄せているシズクさん本人で...。
「シズク?」
キョトン、と首を傾げた。
それも無理もねェ。
シズクさんは、俺が勝手に呼んでいるだけだ。
この人には他の名前がある。
「あ、いえ、あの、その、すみません!」
目が合えば赤くなる。
初めて声が聞けた。
初めてこんなに近くで見れた。
そして初めて、話せた。
「リヴァイ、面白い子掴まえたね。
ね、あなた名前はなんて言うの?」
クスクスと目を細めて笑う。
喋る声も、笑う声も、素敵だ。
ずっと聞いていたい。
「あれ?聞こえてる?」
「はっ!
俺は今期より入隊し、リヴァイ兵長の班に入らせて貰ったエレン・イェーガーです!」
バッ、とつい癖で立ち上がり、敬礼をしてしまう。
リヴァイ兵長や、シズクさんが呆気に取られたのは言うまでもない。