第4章 衝撃
キョウカさんと別れたあと、どうやって兵長の部屋まで行ったのか覚えてねぇ。
気づいたら兵長の部屋に居て、気づいたら仕事してて、気づいたら...訓練の場に居た。
「おいエレン、ボーッとしてんな。
死ぬぞ」
兵長の声も届かない。
なんか言ってるな、程度にしか思わねぇ。
「...おい、いい加減にしろ」
首元が圧迫され、胸ぐらを掴まれたのだと分かる。
煩い。
その手で触んな。
その手は昨日愛なくキョウカさんを抱いた手だろ、その身体だろ。
胸ぐらを掴む手に、不快感しかない。
「...手、離してくださいよ」
兵長の手を無理矢理解き、立体機動の訓練に移った。
目の前には霞んだ視界が広がる。
トリガーを引き、木々を使って移動する。
いつもは感じる頬に当たる風も、今は全く感じねぇ。
「っおい、エレン!前!」
霞んだ視界のまま、叫ぶ兵長の声を聞き流した。
刹那。
ドン、と強い衝撃が身体に走る。
不思議と何も痛くねぇ。
ついに感覚までバカになっちまったのか?
フワリと香った優しい花の香りになぜか安心して、寝不足だった俺の身体は意識を手放した。
意識を手放す瞬間、キョウカさんの姿が見えたような気がした...。