第14章 特例任務
「殺して欲しいの?」
「っ...」
キョウカさんの目に光はなく、暗くて深い色をしている。
少し、背筋が震えた。
「私は人間を殺す趣味はないわ。
私の標的は巨人だけ。
でもまぁ、邪魔する人が居たらどうするか分かんないけど」
クスリと笑う。
「あなた、名前は?」
「...」
「名前、あるでしょ?
黙っててもあなたの得にはならないよ。
...喋ったら殺されると思ってる?
自分に依頼して来た人に」
「...」
「そう、見事な忠誠心ね。
でも、それこそ死ぬことになるわ。
子供に暗殺を依頼する貴族なんて信頼出来るのかしらね。
むしろあなたを口封じの為に殺しそうな気がするけど」
「そ、んな...」
少年の瞳が大きく揺れる。
「死ぬ覚悟も決まってないのに暗殺なんて引き受けるな。
自分の未来を簡単に潰さないこと」
顔を近づけ、告げる。
「取引、しましょ?
あなたが全ての情報を私に提示する。
その見返りとしてあなたの身は保証するわ。
貴族が然るべき罰を受けるまで、だけどね。
どう?
悪い条件じゃないでしょ?」
「...」
「名は?」
「......ルネ」
「そう、ルネね。
取引、どうする?」
「...受けてやるよ」
「交渉成立ね。
今回の件の首謀者は誰?」
「その前に縄、解けよ。
擦れていてー」
「分かった」
シュルリと全ての縄を解けば、少年の腰辺りがキラリと光った。