第12章 噂の収縮
「ん......?」
後輩を誘惑?
後輩って俺のことだよな。
そりゃ俺キョウカさんのそばに居たし。
でも俺はあんまり人の多い場所に行けねぇし、何よりあの光景を見れば誰がどう見たって俺がキョウカさんを一方的に慕ってるっつーことしか分からねぇ筈だ。
誘惑ってなんだ。
なんでそうなった。
「あ......」
俺とキョウカさんの関係を知ってるのなんて、あの人しか居ねぇし、その上キョウカさんを嫌ってるのもあの人だけだ。
「兵長!
すいません、俺ちょっと用事が...」
「やっと分かったか。
さっさと行け」
「はい!」
勢いで飛び出したのは良いけど、あの人の所属を知らねぇ。
「エレン...!」
なんでこうもタイミングが...でも今は好都合だ。
「リザさん。
ちょっと良いですか?」
「あら、エレンからのお誘い?
もちろん良いわよ」
リザさんを誘って、兵舎裏に向かう。
「こんな人気のない場所に連れて来るなんて...どうしたの?エレン」
俺の首裏に腕を回し、耳元で囁く。
やめろ、気持ち悪ぃ。
「キョウカさんの噂流してんの、あんたですよね?」
その腕を解きながら言う。
ピタリと動きが止まった。
「どうしてそう思うの?」
「1つだけ気になった噂があるんですよね。
後輩を誘惑してるっつー」
「あら、本当のことじゃない。
本当のことを話して何が悪いのかしら」
知らばっくれることなく、開き直り。