第11章 噂の行方
リザさんの去って行った方向を見つめる。
「エレン...」
後ろから震えた声が聞こえ、勢い良く振り返った。
「キョウカさん!」
走って近づき、笑う。
「これからお仕事ですか?
それとも今日は帰れますか?」
「あ、今日もダメ...」
「そうですか...お仕事頑張ってください!
俺が手伝えることがあれば、なんでもしますから!」
「なんで...」
「はい?」
「なんで普通にしてるのよ」
そう話すキョウカさんの声音は低くて固い。
「キョウカさん...?」
「なんで...」
首元の布を掴むと、壁に押しつけられた。
首が苦しいけど、キョウカさんの顔を見て言葉を飲み込む。
人通りの少ない廊下で良かった。
もし他の奴に見られたらキョウカさんの立場が悪くなっちまうかもしれねぇ。
「エレン、あなたが好きなのは誰...?」
「!キョウカさんです」
目を見て告げる。
「そうよね。
それなら、どうして...あの子とキスしてたの?」
「はい?」
「キスしてるところを見られても平気で居られるの?
エレンが好きなのは、私じゃないの?
だったらずっと私のことだけを見てなさいよ」
グッと首元の布を掴む手に力がこもる。
思いの丈をぶつけてはぁはぁと呼吸を乱しているキョウカさん。
その表情は泣きそうで、壊れそうだ。