第11章 噂の行方
「...休憩なら、俺が書類を手伝ってやってる間に取らせる。
それで文句はねェか?」
「...はい、大丈夫ですけど...」
この人はキョウカさんと付き合ってる説をより強めたいんたろうか。
「兵長は、キョウカさんに特別な感情を抱いてねぇってことで良いんですよね?」
「くどい。
そんなに不安なら首輪でも繋いで必死に繋ぎ止めとけ」
「すみません...」
キョウカさんと会える機会がほとんど消え、距離が空いちまう。
部屋でも会えねぇし、兵舎でも会えねぇ。
そう考えるだけで胸がツキリと痛む。
昨夜、定時後の執務室にキョウが来た。
「書類か?」
こいつが1人で訪ねて来るなんて、書類かエレンかしかねェ。
エレンは帰ったし、なら書類だろう。
「違うの」
「珍しいな、なんだ?」
「明日からしばらく、書類が立て込んでて部屋に帰れないことにするの。
だからしばらくそういうことにしておいてくれる?」
「俺に嘘をつけと言うのか?」
「そう」
「別にそれは良いが...」
紅茶を一口飲み、口を開く。
「お前が静かなんて珍しいな」
こいつがこんなに潮らしいところなんて、恋人が死んだ時以来だ。
「そう...?」
「あぁ」
「例の噂がそんなに辛ェか?」
気を病む理由なんざ、これしか見つからねェ。