第11章 噂の行方
「ちょっとリザさん!」
途中で脚を止め、その腕を払う。
「リザって呼び捨てで呼んで欲しいな。
あの人よりエレンの特別になりたいの」
「出来ません」
「ねぇ、エレン。
今夜飲みに行かない?
もちろん奢るわよ」
「俺、酒飲めないんで」
「あ、そう?
じゃあご飯行きましょ」
「え、いや俺は...」
「定時に兵長のところへ伺うわ。
そこに居るんでしょ?
じゃあ」
一方的に用件を告げ、去って行くリザさん。
元来た道を戻るってことは、こっちに用がなかったってことだろ?
なんで来たんだ?
「エレンです、失礼します」
「あぁ」
「今日は俺何をやれば良いですか?」
紅茶を淹れ、兵長の机に置くと尋ねた。
「掃除」
「はい?」
「その机の上を掃除しろ、散らかってる」
「は、はい」
散らかってるって言っても、書類とペンが雑に置かれてるだけだ。
それすらも許せねぇなんて、兵長どんだけ綺麗好きなんだ?
「エレン」
「はい」
「しばらくはキョウの執務室に顔を出すなよ」
「え、なんでですか?」
仕事が終わったら寄ろうと思ってたのに。
「仕事が溜まってんだ、邪魔してやるな」
「だったら尚更休憩を入れてやらねぇと...」
キョウカさんは目の前のことに夢中になって、自分の身体のことなんて考えねぇ。
ぶっ倒れちまう。