第8章 権力者
「ありがとう!
リヴァイなら手伝ってくれると思った」
パァァ...と顔を輝かせる。
「明日また来る」
「はーい」
出来上がった書類を受け取り、キョウの執務室をあとにした。
明日、仕事が片づいたら酒付き合わせるか。
酔っても知ったことじゃねェ、エレンに介抱させりゃ良いだろ。
せいぜい俺が酔うまで潰れるなよ。
クスリと笑って廊下を歩く。
「何やってんだ、エレン」
「うわぁぁっ」
扉を開け、挙動不審なエレンに声を掛けた。
「びっくりさせないでくださいよ...」
「知らん。
てめェが勝手に驚いただけだ」
「あ、紅茶飲みます?」
「良い。
それより何をやってんだ?」
書類はもう終わったのか、という言葉を飲み込んだ。
その机の上に積まれている書類を見れば答えなんて分かったもんだ。
「字を少し間違えちゃったので、なんとか直して出来ないかと」
「書き直せ」
読みにくいものを俺に渡す気か。
「ですよね...はい」
明らかショボンとして、ペンを持ち直したエレン。
こういうところはキョウにそっくりだ。
「キョウカさんのところへ行って来たんですか?」
「あ?」
なぜ分かる。
俺は書類を届けに行くとしか言ってねェ筈だ。
「兵長からキョウカさんの匂いがします」
随分長く居たみたいで匂い移ってますよ、と苦い顔をして言う。