第8章 権力者
「出来ました、兵長」
「あぁ。
そこに置いておけ」
「はい」
「俺は書類を届けに行って来る。
留守を頼む」
「書類なら、俺が届けに行きますよ?」
「良い。
てめェはその溜まった書類をやってろ」
「分かりました」
確かに書類は溜まってますけど...!
兵長が執務室を出て行く。
「キョウ、居るか?」
俺の隣にある執務室の扉を叩く。
「空いてるよ」
返事を待ち、扉を開けた。
「書類だ」
さっき仕上げたばかりの書類の束を手渡す。
「ありがとう」
「キョウ、最近溜まってねェのか?」
「何を言い出すの?急に」
書類に目を通すのをやめずに話すキョウ。
「最近、ヤりに来ねェだろ。
あんだけ来てた奴が」
「い、良いでしょ?
それより暇なら紅茶淹れてくれない?」
「俺に雑用させる気か?」
「もちろん」
「チッ...」
こいつにはなんか逆らえねェんだよな。
昔の記憶っつーのがまだ残ってんのか。
昔俺が調査兵団に入ったばかりの時に教育係についたのがこいつ、キョウだ。
その時の俺が荒れてたのもあるが、反抗するごとに拳や脚が飛んで来た。
当時のこいつに対するイメージは、暴力女。
比較的可愛らしい顔つきに似合わねェぐらい強ェ。
「ほら」
「ありがとう」
紅茶を淹れると、キョウの机に置いた。