第8章 権力者
「さ、エレン。
ちょっと早めに訓練に向かおう?
遅れたらリヴァイに怒られちゃう」
だからやめろ。
そう何度も何度も兵長の名前を出すな...!
嫉妬で気が狂いそうになる。
「エレン?」
大丈夫?、と顔を覗き込むキョウカさん。
「俺と兵長、どっちが好きですか」
「え?」
「あ、いや、すみません。
なんでもないです」
バカか、何言ってんだ俺。
恋人でもねぇ奴から言われても戸惑うだろ。
「行きましょう」
気まずい空気を払拭しようと、キョウカさんの手を握り歩き出す。
「エレン」
冷静なキョウカさんの声に呼び止められた。
「......はい」
「エレンかリヴァイ、どちらかを選ぶなんてことは出来ない。
それに今はまだ他の人を好きになるなんて考えられないよ。
私は彼が好きなの」
知ってる。
キョウカさんの中をその恋人が埋め尽くしていることなんて。
「今自分がどうしたいか、分からないの。
彼のことは好きよ。
でも同時にエレンのことも大事に思ってる。
出会ってすぐで軽いとか思うかもしれないけど...。
だから、私がちゃんと自分で答えを出せるまで...待っててくれないかな?
どのくらい時間が掛かるかなんて分からないけど、必ず答えを出すから...!」
「もちろんです。
俺、キョウカさんが答えを出せるまで待ちます。
好きになって貰えるよう努力します」
「ありがとう、エレン」
ふわりと微笑んだ。