第8章 権力者
紅茶とクッキーを挟みながら話を進める。
「エレンはどうだったの?
書類得意?」
「俺は...」
言葉に詰まる。
正直言って書類仕事は苦手で、下手だ。
ミスは多いし、時間も掛かる。
「苦手です」
「中々上手くいかないよね。
でも大丈夫、それは時間が解決してくれるから。
きっとすぐ出来るようになるよ」
キョウカさんに言われると、本当にそうなる気がする。
「12歳で入ったってことは、相当長いですよね?」
酒が飲める年齢だから、それなりに長ぇ筈。
「ん、まぁ。
エレンから見るともうオバサンな年齢だけどね」
「そんなことないです!」
「ふふ、ありがとう」
クッキーを1つ頬張るキョウカさん。
動く口元に目が行く。
「ついてますよ」
口端についたそれを手で取ると、自分の口に持って行った。
「もう、言ってくれれば自分で取ったのに...!」
顔を赤く染めて怒る。
キョウカさんと話をしていると、時間はあっという間に過ぎた。
気づけば日付けは変わっている。
「そろそろ寝よっか」
「俺はまだ大丈夫ですよ?」
キョウカさんはまだ眠くなさそうだ。
「エレンも明日訓練あるし、寝不足だとまた倒れちゃうよ?
今度は庇い切れないかもしれないし。
それにあんまりエレンを独占してると、エレンのことを好きな子に怒られちゃうし」
「俺のことを好きな奴なんて居ません。
仮にもし居たとしても、俺はあなたと居たい。
俺が選んだことです。
何度も言わせないでくださいよ。
俺はあなたが好きなんです。
好きな人と話せるのに、嫌な思いする奴なんて居ません」