第8章 権力者
「エレン」
「はい?」
「ありがとう」
スッとキョウカさんが離れて行く。
「いえ、俺に出来ることなら」
「優しいね」
紅茶を飲み、笑った。
「女の子は放っとかなさそうね。
なんか独り占めしちゃって申し訳ない」
「あなたになら、全て捧げます。
身体も、心も」
真っ直ぐ目を見て告げる。
ちょっと重てぇか?
引かれるか?
「好きです、キョウカさん」
「エレン...」
「俺ならあなたを泣かせたりなんかしません。
俺に...しませんか?」
「...少し時間をくれない?」
「!はい」
この前とは違う反応。
これは少し期待しても良いってことか?
そうなのか?
「キョウカさん」
「ん?」
「これ、もし良かったら受け取ってください」
昨日買ったアクセサリーの箱を渡す。
「開けても良い...?」
「はい。
あの、無理につけなくて良いですからね?」
「分かってる」
ゆっくりとその小さな箱を開ける。
「髪留め...?」
「はい。
仕事してる時、いつも髪結んでるので」
プレゼントしたのは、桜のチャームのついた髪留め。
「貰っても良いの?
高かったんじゃ...」
「貰ってください」
「ありがとう!」
嬉しそうに笑い、おもむろに髪に手を伸ばした。
「どう...かな?」
髪留めをつけ、照れくさそうに見せる。
「綺麗です...!」
思った通りよく似合う。
程良く主張する桜の花。
優しい色合いがキョウカさんにぴったりだ。