第8章 権力者
不安を抱きながら扉をノックした。
「エレンです。
もし良ければお話しませんか?」
声を掛けてから、しばらく沈黙が続く。
居ねぇのか、話したくねぇのか。
どっちなのか分からずしばらくその場に留まる。
「...まだ居る?」
流石にそろそろ諦めようと、背中を向けようとした瞬間に声を掛けられた。
「はい!
あ、居ちゃまずかったですか...?」
1人で居たいっつってたのに急に部屋に押しかけて。
迷惑に思われてたら嫌だな。
「入って」
扉を開け、招き入れてくれる。
「ありがとうございます」
「お茶飲む?」
「あ、俺がやります。
キョウカさんは座っててください」
「ありがとう」
キッチンを借り、紅茶を2杯淹れる。
「気分優れないですか?」
カチャリと音を立ててカップを置いた。
「少しね、でも大丈夫」
いつもの優しい笑顔はそこにはない。
あるのは悲しそうな、でも疲れたような表情だけ。
「エレン、少し後ろ向いて?」
「あ、はい」
クルリと後ろを向いて座り直す。
「嫌だったら言ってね」
と、俺の腹に手が回った。
キョウカさんが後ろから俺を抱きしめてる。
「キョウカさん!?」
急なことに動揺する。
どうしたんだ?
「少しだけ、こうさせて」
ギュ、と腹に回った腕に力がこもった。
「はい」
少しと言わずいくらでも...!