第8章 権力者
「兵長」
「今度はなんだ」
「キョウカさんの恋人だった方って、どんな方なんですか?」
「...知らん、キョウに聞け」
「キョウカさんに聞けないから兵長に聞いてるんじゃないですか」
きっと、キョウカさんに聞いたら傷つけちまう。
楽しかったことも、嫌なことも全部思い出させることになる。
「...なぜ知りてェ」
「俺に...勝ち目があるのかなって」
振り向かせてやるって思ってても、心のどっかでは弱気になってる。
「...俺の班だった。
これで良いか」
もっと、知りてぇ。
心の中に黒いモヤモヤが渦巻くけど、それでも知りてぇと思ってしまう。
「もう少しだけ教えてください」
「ダメだ。
あとはキョウに聞け」
「...はい」
兵長から聞き出すのを諦めた。
この人は口が固そうだから、いくら聞いたとこで何も教えてくれねぇだろうな。
終始考え事をしながら、今日の仕事を終えた。
調査兵団に入って、こんな書類仕事が多いとは思わなかった。
正直書類作業は苦手だ。
「じゃあ兵長、お先にすいません」
「あぁ」
執務室を出て、キョウカさんの私室へ向かった。
門前払いされたらどうしようか。