第7章 Fate…
翌朝…
俺は智が目を覚ます前に、ある人に電話をかけた。
その人は、俺が翔さんの劇場でストリッパーになるよりも以前に世話になった人で…
ゲイバーを経営をしていて、ヤツらの元から逃げた俺を、理由も聞かずにショーダンサーとして雇ってくれた、俺にとっては恩人とも言える人だ。
勿論、後々ちゃんと理由は話したけどね。
だから今度も、
「ごめん、また茂子さんの世話になってもいいかな?」
突然の俺の電話にも関わらず、
「仕方ない子ね」
そのたった一言で、俺を快く受け入れてくれた。
俺は電話を切ってすぐ、そう多くはない私物をボストンバッグとキャリーケースに纏め、玄関の外へと運び出した。
そうすれば、もし俺が部屋を出る前に智が目を覚ましたとしても、適当な言い訳だけで済む。
出来れば誰にも気付かれずに出て行きたいけど…
俺は茂子さんが迎えに来るまでの間、智と、それから翔さんに宛てた手紙を書いた。
別にメールでも良かったんだけど、散々世話になった二人には、自分の言葉でちゃんとお礼を言いたかったから…
そして手紙を書き終えた時、タイミングを計ったようにスマホが震えた。
茂子さんの到着を知らせるメールだ。
俺は二人に宛てた手紙と、部屋の鍵をテーブルの上に置くと、ベッドで寝息を立てる智の髪を指で掬った。
「ごめんね、智…」
俺の借金の肩代わりをしてもいいと言ってくれた智の気持ちは、今まで感じたことがないくらいに嬉しかった。
友達だ、って言ってくれたこともね。
でもね、智?
だからこそ、智には…智だけには、迷惑かけたくなかったんだ。
だって仮に智の申し出を受けてしまったら、俺達もう友達じゃいられなくなってちゃうから…。
だからごめんね、智。
バイバイ、俺の一番大切な友達…