第7章 Fate…
「アイツらさ、その時の客でさ…」
そう、元々はただの客だった。
一夜限りの、通りすがりのような関係。
「でもさ、何度か会ううちにさ、あの中の一人が、俺と客との仲介みたいなこと始めてさ…。その時になって漸く気付いたんだ、アイツらがグルだった、って…」
俺は言われるままに身体を売り続けた。
そうしてれば、日々を過ごすだけの金は手に入ったし、何より“俺は一人ぼっちじゃない”って思えた。
でもそれも最初のうちだけ…
「アイツらさ、仲介料だとかなんとか言って、俺から売上の殆どをせしめるようになってさ…」
結局俺の手元に残ったのは、一日食うに困らないだけの金と、その日の宿代だけ。
って言っても、ネットカフェの、あの薄暗くて狭い空間が、専らの俺の常宿だったけど…
「…んだよ、それ…。いくら仲介料だって言ったって、元はお前の…お前が身体売って稼いだ金だろ? なのに…」
表情にこそ出さないけど、智が怒っていることは、俺の手を包んだ智の手に込められた力で分かる。
「そうだよ、俺が…俺がさ、好きでもない、それこそ見ず知らずの男達に身体を良いようにさせて、それで漸く手に入れた金だよ…。なのにアイツら…」
今更ながらに、自分の愚かさに悔し涙が溢れる。
後悔したって過去を消せる訳でもないのに…
「逃げようとは思わなかったのか?」
「そりゃ…逃げたかったよ…」
何度も逃げようと思った。
もうこんな仕事も辞めて、真っ当な仕事に就こうって…
「でも出来なかったんだ…」
「何で…」
「俺、アイツらがまだ客だった頃に、アイツら騙して金借りてたから…」
「幾ら…だよ…」
「一人二百万だとして、六百万…かな…。多分、アイツらの言う“デカい貸し”ってのは、そのことだと思う」
とは言っても、俺からせしめた金で、その半分以上は返せてる筈だけど…