第7章 Fate…
こんなことになるなんて…思ってもなかった。
ううん…、アイツらが劇場に現れた時から、いつかこんな日が来るって思ってたんだ。
だから今回の公演が終わったら、もう智達の前から姿を消そう、って…
ストリッパーの世界からも足を洗おう、って…
ストリッパーの仕事は、そりゃ辛いことだってあったけど、嫌いではなかったし、それに何より智を初め、支配人でもある翔さん達にも、十分過ぎるくらい良くして貰った。
だから出来ることなら…そう願わないわけでもないけど、アイツらに居所を知られてしまった以上、もうそれも淡い夢でしかない。
これ以上大切な人達に迷惑はかけられないもん。
なのに、
「なあ、俺じゃ何の力にもなれねぇかもしんねぇけど、話してくれないか?」
どうして?
俺のために酷い目にあったのに、どうしてそんな事が言えるの?
平気なフリしてるけどさ、どうってことないさって智は笑うけどさ…、俺分かるんだよ。
ボロ雑巾みたいに扱われて、本当は身体だって辛いだろうし、翔さんのことだって…
いっそのこと殴ってくれれば、もっと楽になれるのに…
「な、ニノ?」
そんな風に優しくされたらさ、俺…
甘えたくなっちゃうじゃんか…
駄目だ、って分かってるのに。
「前にさ、話したことあったよね、俺がウリやってたこと…」
目の前で智が無言で頷く。
そして俯いてしまった俺を覗き込むようにして、所々擦りむけた指で、膝の上で握った俺の手を包み込んだ。
「でも…どうしようもなかったんだよ…な?」
「…うん…」
ただ一人の身寄りもなく、学歴すらない俺が、たった一人で生きて行くには、そうするしかなかったんだ…その時は…
今思えばもっと違う道があったんだろうけど…