第6章 Accident…
どうにかこうにかニノの部屋に辿り着いた俺は、汗と誰の物かも分からない体液で塗れた身体を何とかしたくて、すぐ様バスルームに駆け込んだ。
シャワーの飛沫を頭から浴び、シャンプーやボデイーソープで全身を泡で包んだ。
それでもまだ何処か自分の身体が汚れているように感じて、スポンジで何度も何度も擦った。
それから中も…
アイツらが俺の身体を通った痕跡を、一ミリたりとも残しておきたくなかった。
「智、タオルと着替え…、ここに置いとくから…」
「お、おう…、悪ぃな…」
磨りガラスの向こうから聞こえる声に、務めて普通を装った声で返す。
きっとニノには丸分かりなんだろうけど…
普段よりも長めにシャワーを浴びた俺は、ニノが用意してくれた下着と服を身に着け、濡れた頭をバスタオルで拭きながらバスルームを出た。
こんな時、背格好が似てるってのは、案外便利なのかもしれない。
「飲む?」
ベッドに背中を預けるように床に座った俺に、ニノが缶ビールを差し出す。
俺はそれを無言で受け取ると、カラカラに渇いた喉に一気に流し込んだ。
すると途端に込み上げて来る吐き気に、俺はギシギシと軋む身体で、転がるようにトイレに駆け込んだ。
「ウッ…、グエッ…」
便器に顔を突っ込み思う…
俺はストリッパーだ。
オナニー目的の野郎の前で、股おっぴろげて、男の象徴を見せつけて…、なんならケツの穴だって…
だからこんなこと…どうってことない…
全部吐き出しちまえばいい…
そして忘れるんだ、何もかも…
肩で荒い息をしながら、何度も繰り返し自分に言い聞かせた。
大したことじゃないさ…
大したことじゃ…
そう思った瞬間、不意に目の前が真っ暗になって、俺はそのまま意識を手放した。