第6章 Accident…
頬に小さな痛みを感じて瞼を持ち上げる。
霞んだ視界に映ったのは、泣き腫らしたニノの顔で…
そっか、俺トイレで…
「もう…俺智が死んじゃったんじゃないかと思って…ビックリしたんだから…」
「バカか…、ンなことで死ぬかよ…」
こんな簡単に死ねるなら、俺は今頃もう潤の傍に逝ってるさ…
「あ、そう言えば翔に連絡…」
あれから随分時間も経ってるし、きっと翔のことだから心配してる筈。
俺はテーブルの上に置かれたスマホに手を伸ばした。
でも、
「それなら大丈夫。俺が途中で具合悪くなって、智に送って貰ったことにしてあるから。だから安心して?」
「そっか…サンキューな…」
ニノの機転に、俺は内心ホッと胸を撫で下ろした。
翔のことは勿論だけど、これでニノとゆっくり話が出来る。
俺は重く軋む身体を起こし、ニノの頭にポンと手を乗せると、ゆっくり話を切り出した。
「なあ、ニノ? アイツら一体何なんだ? お前に貸しがあるとか言ってたけど…」
記憶が朧気ではあるけど、確かに“デカい貸しがある”って…
「アイツらは…」
言いかけた途端に口篭るニノ。
よっぽど深い事情があるんだろうか…
「なあ、俺には話してくれねぇか? な?」
だって俺達、友達だろ?
俺が一方的に思ってるだけかも知んねぇけど…
でもな、ニノ…
仮にお前が俺を“友達”だ、って思ってなかったとしても、関わってしまった以上、俺にはアイツらが何故ニノに付き纏っているのか…ニノが何から逃げて来たのか…その理由を知る権利が俺にはある筈だ。
そうだろ、ニノ?
例えそれが、聞くんじゃなかった…、関わるんじゃなかった…、って後悔する結果になろうとも、な…