第6章 Accident…
「止めて、智には関係ないでしょ!」
葉音だけが不気味に鳴る薄暗い境内に、ニノの叫びが虚しく響く。
その間も俺の身体はズルズルと引き摺られ…
「離せよ…っ! 離せってぱっ!」
何とか抵抗を試みるが、自分よりもうんと体格の良い男達に抑え込まれては、それだって何の効力もない。
そしてとうとう今にも朽ちてしまいそうな社殿の板張りの上に押し倒された時…
ああ、また翔に心配かけちまうな…
諦めにも似た感情が沸き起こって、俺は全ての抵抗をやめた。
「分かった、好きにしろ。その代わり、ニノに何の用があるか知んねぇけど、これ以上ニノに関わらねぇでくれ」
理由なんて関係ない。
ただニノには、これ以上コイツらと関わって欲しくなかった。
たった一人の友達…だから…
「それはどうかな…。ニノにはデカい貸しがあるんでね…」
貸し…?
貸しってなんだよ…
ひょっとして…、その“貸し”ってのが、ニノを不安な顔にしていた原因…なのか?
俺は男達に抑え込まれながら、残る一人に羽交い締めにされるニノに視線を向けた。
「駄目…、智には手を出さないで…、お願いだから…」
薄闇でも分かるくらいに、目に涙を貯めたニノが、何度も懇願する。
でもそんなの容易に聞き入れて貰える筈もなく…
「いいか、ニノ? 良く見とけ。お前が散々コケにしてくれたおかげで、大事なお友達が酷い目に合うのをな」
「やめて…っ…!」
「うるせぇ、黙ってろ!」
ニノの鳩尾に、男のパンチが突き刺さり、ニノは呻きと共にその場に崩れ落ちた。
「ニノっ!」
「さと…し…、ごめ…んね…、ごめ…ん…」
片手で腹を押さえ、ニノが俺に向かって手を伸ばす。
でもその手は俺に届くことはなく…
俺は両手を一纏めに板張りに押さえつけられ、浴衣の襟と裾を乱暴に開かれた。