第5章 Time…
ふと壁の時計に目を向けると、時刻はとうに天辺を超えていて、
「そろそろ寝るか…」
俺は一つ伸びをすると、リビングの照明を消してから、智が眠る寝室へと入った。
ベッドの端に座って、年の割には幼く見える寝顔を見下ろす。
「くくく、赤ん坊みてぇじゃん…」
ステージ上で見せる、あの見る者全てを魅了する妖艶な姿は見る影もなく、無垢な寝顔だけがそこにはあって、俺は手を伸ばすと、その柔らかな頬をそっと撫でた。
「ん…、今…何時…?」
瞼を開くことなく、頬に触れた俺の手を、智の体温高めの手が包む。
「もうすぐ一時かな…」
「そか…、一時…って、えっ…、嘘…マジか…」
驚いて開いた瞼を擦り、智が困ったように笑う。
どうせ智のことだから、俺の飯がどうとか、風呂がどうとか考えてんだろうな…
「なあ、飯はどうした? あと、風呂は?」
って、図星かよ(笑)
俺もしかして透視能力でもあんじゃね?なんて笑いながら、起き上がろうとする智を両腕で抱き寄せた。
「飯なら適当に済ませたし、風呂は朝入ればいい」
「でも俺、めっちゃ汚れてっけど?」
言われてみれば、確かに汗と、微かに匂う情事の後の残り香…
「いいよ、別に。俺は気にしねぇから…」
少々臭かろうが、それが智から発せられてる匂いならば、俺はそれを臭いとも思わないし、寧ろもっと嗅いでいたいと思う。
って、俺も相当な変態だな。
「んなことより、もっとそっち詰めろよ。俺が寝る場所ないだろ?」
「そんなこと言って、朝になったら自分が大の字になって寝てるくせに…」
ブツブツ文句を言いながらも、ベッドの端に身体を寄せる智の首の下に腕を差し込んでやると、俺の肩口にコツンと額を預け、智のは再び瞼を閉じた。
寝起きも(俺よりは)良いが、寝付きの良さは天下一品だな(笑)