• テキストサイズ

踊り子【気象系BL】

第5章 Time…


「でな、その祭りに雅紀をだな…」

智が用意してくれた朝飯をパク付きながら、昨日雅紀にした話を智にもした。

当然、智のことだから「俺は行かない」って言うだろうと思っていた。

ところが、だ…

「へぇ、面白そうじゃん。それにあの二人なら、結構お似合いだしな」

智の口から出たのは、全く予想もしていなかった言葉で…

「だ、だよな…、お似合いだよな」

俺の方が戸惑ってしまう。

「待ち合わせは神社でいいのか? 多分俺とニノの方が早く着くと思うけど…」

「そう…だな。そうして貰えるか?」

俺と雅紀は、立場上仕事をほっぽり出して祭りに繰り出す…って訳にはいかないのを、智も良く理解してくれている。

「おっ、そろそろ出ないとマズイな…」

俺は残りのパンを口の中に押し込むと、カフェラテで一気に流し込んだ。

滅多に劇場に顔を出すことのない社長、つまり親父が月に一度だけわざわざ劇場に足を運び、経営状態をチェックする日がある。

それが今日だ。

「俺先出るけど、お前一人で大丈夫か?」

「ばか、ガキじゃああるまいし、一人で行けるっつーの」

それもそうか…

でもな、智?

分かってはいても、どうしても心配になるんだよ、お前のことが…

一人にしたら、何処かに行ってしまうんじゃないか、ってな…

「あ、おいネクタイ…」

ソファーの上に置いたPC入のブリーフケースを下げた俺を、智の手が引き止める。

そして俺の首元に手を伸ばすと、緩んだネクタイをキュッと絞めあげた。

ネクタイすら自分で絞められねぇくせにな(笑)

「よし、これでいい。行ってこい」

俺は智の顎を持ち上げると、智が瞼を閉じるのを待って、その唇に自分のそれを重ねた。

「じゃあ…、行ってくる」



穏やかな時間…

この時間がいつまでも続けばいいと、そう思っていた。


いや、違うな…


俺は願っていたんだ…
/ 426ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp