第5章 Time…
「ぜっーてー無理っ!」
劇場駐車場に着いても、智は頑として車から降りようとはせず…
「なあ、そこをなんとか頼むわ、な?」
あー、情けねぇ…
なんで俺が智に頭下げなきゃなんねぇんだよ、ったく…
でも現状、ダンスが出来て、見てくれも良くて、なんて奴…智以外には考えられない。
実際、智の身体をマジマジと見たことはなかったが、一見華奢なように見えて、案外引き締まった良い身体をしているのは、服の上からでも十分分かる。
「いくら翔の頼みでも無理。裸になんのは別に構わねぇけど、踊んのだけは絶対無理」
最初っからすんなりいくとは思ってなかったが、まさかここまで頑固だとは…、ちょっと予想外だった…
「つか、今お前何て言った? 裸になるのは構わない、って言ったよな?」
「あ、ああ、確かに言った…かも…」
「だったらそれでも構わねぇ」
「は、はあ?」
勿論、俺が求めてるのは、ショーを目的としたストリップであって、ただ棒立ちで服さえ脱いでりゃ良いってもんでもない。
そこには色んな要素も必要になってくるのは当然のことだ。
でも今の状況で、それに拘ってる余裕なんて、俺にはない。
女性ストリッパーに対して男性ストリッパーの比率が数段に少ない以上、一人抜ければその代償はかなりのもんだ。
しかもそれが人気NO.1のダンサーともなれば…尚のことだ。
背に腹はかえられねぇ…
「着いてこい」
「えっ、ちょっ…」
俺は助手席のシートで、シートベルトを握り締めたまま、テコでも動く素振りのない智を強引に車から引き摺り下ろすと、俺の手を振り解こうとする手をギュッと掴み、裏の通用口から劇場内へと入った。
楽屋のある二階へと続く階段は、通用口を抜けてすぐの所にあって、俺は薄暗い階段を、智を振り返ることなく駆け登った。