第5章 Time…
仕方ねぇ…
柄にもないことだが、ここは一つ、恋のキューピット役でもしてやるか…
「お前さぁ、来週の金曜日開けとけるか?」
「来週? 今のとこ、何も予定ないけど、なんで?」
全く、疎い男だぜ…
「実はその日、近所の神社で祭りがあってさ…。智がニノと行く約束してるらしくて…」
って、真っ赤な嘘。
でも実際、その日がニノの今月最後の公演になることもあって、飲む約束はしているらしいが…
「お前も一緒にどうかな、と思ってな? まあ、無理にとは言わないが…」
さあ、どうする?
これ以上、告白の場に相応しいシチュエーションは、そう滅多に転がってるもんじゃない。
このチャンスを生かすも殺すも、雅紀次第、ってことだ。
「行く! 行く行く!」
くくっ…、そうこなくっちゃな(笑)
「そっかそっか、じゃあ楽しみにしてるぜ。っつーことで、さっさと済ませちまおうぜ? 智をあんま長く待たせとけねぇしな」
俺は雅紀をステージ上に残し、客席へと飛び降りる、と、シートの一つ一つをチェックして回った。
とは言っても、キャパ自体そう大きくないから、その作業だって二人で手分けすれば、ものの五分もかからずに終わる。
「よし、問題はなさそうだな。後は音響ルームだけど…」
「あ、それなら問題ないよ。さっき秀明が細かくチェック入れてたから」
「秀明が? なら、安心だな」
腕も立って、信頼もおけるスタッフに恵まれたことに感謝しないとな。
「よし、じゃあ…帰るか…。戸締りは俺しとくから…」
「うん、じゃあ俺先に上がらせて貰うね!」
「おう、お疲れ」
満面の極上スマイルに鼻歌混じりで、スキップをしながら雅紀が客入れ用のドアから出て行く。
「一先ず作戦成功、ってとこか…」
後は智をどうやって説き伏せるか、だな。
アイツ、祭りなんて興味無さそうだし…