第29章 Another dancer…【Extra edition】
一瞬見開かれた目が、徐々なな閉じて行く。
それが俺を受け入れてくれた証明…、なんて都合の良いことは考えちゃいない。
でも、俺の腕を掴んだその手は、俺達の間にあった壁が、ほんの少しだけ低くなったことを示すように暖かくて…
「ニノ…、俺…ニノを抱きたい…」
唇を離し、上気した頬を両手で包み込む。
「だめ…かな…?」
閉じたままの瞼に問いかけると、微かに濡れた睫毛が震えた。
「俺じゃ嫌?」
「そんなことない…。俺、相葉さんのこと好きだし…」
「だったら…」
いくらニノに消し去ることの出来ない過去があったとしても、俺を拒む理由なんてない。
「好きだよ…? すっごく好き…。こんなに誰かを好きになったの、相葉さんが初めてかもしんない…。でもね、でも…だからこそ知られたくないんだ…」
「何…を…?」
俺の腕の中から逃げ出そうとするニノを、さらに強い力で抱き竦め、それでも俺をまっすぐ見ようとしないニノ。
その両の目から、とうとう涙が零れ落ちる。
泣かせたいわけじゃないのに…
「嫌われたくない…」
俺がニノ…を…
「そんなこと…」
「絶対にないって言える? だって俺、売春やってたんだよ? 数えきれないくらい、沢山の人と寝たんだよ? それでも相葉さんは俺を抱けるの? 無理だよ…」
ニノに売春をしていた過去があることは、何も昨日今日知ったことじゃない。
そりゃ俺だって悩んだし、迷いだってあった。
でもそれ以上にニノが好きな気持ちの方が強くて…
「無理なんかじゃない。だって俺が知ってるニノは、誰よりも綺麗で、可愛くて…、ちょっとだけわがままで…。俺はそんなニノが好きなんだ。それじゃ理由にならない?」
そう、誰に何を言われようと、たとえニノが俺を全力で拒んだとしても、俺の気持ちがこの先変わることはない。
適当過ぎる俺だけど、それだけは自信を持って言える。
「ニノ、愛してる…」