第29章 Another dancer…【Extra edition】
俺が夕食の場所に選んだのは、たまたま通りすがった、今にも傾きそうなラーメン屋。
「ねぇ、俺のことバカにしてる?」
ニノは不満顔だったが、俺としてはそんなつもりは全然なくて…
「こうゆう店の方が案外美味かったりするじゃん?」
しかも、財布にも優しいしとくれば、願ったり叶ったりだ(笑)
予想外に美味いラーメンで腹を満たし、店を出た俺達は、そのまま車に乗り込むことはせず、店の前を流れる川の堤防へと足を向けた。
勿論、俺の手はしっかりニノの手を握っている。
「うわぁ…、綺麗…」
陽が落ちる直前の、茜色に染まった空が反射して、キラキラと光る川面に、ニノが感嘆の声を上げる。
でも俺には、どんな綺麗な景色よりも、やっぱりニノの方が綺麗に見えて…
「相葉…さん…?」
握っていた手を引き寄せ、ニノを背中から抱き竦めた俺を、ニノがちょっとだけ戸惑ったように振り返った。
「どう…したの…? ねぇ、苦しいよ…」
「うん…ごめんね…。でも少しだけ…こうしてて良いかな?」
「少しだけ…なら…」
「ありがとう…、ニノ…」
まるで心臓の音まで聞こえてしまいそうな距離…
俺はニノの肩口に顔を埋めると、小さく息を吐き出した。
そして、
「ニノ…、俺さ…、ニノのことが好きだ…」
もう何度目かになるか分からない告白をする。
当然、俺の告白なんて聞き飽きただろうニノは、それでも俺を茶化すことなく、俺の腕の中で小さく頷く。
「うん、知ってるし、俺も相葉さんのことは好き…。でも…」
言いかけて飲み込んでしまった言葉の先を、俺は嫌って程知ってる。
それはニノがずっと胸の底に抱えている、過去の自分に対する後悔と、そして嫌悪感…
だから俺は、その先を言わせないように、ニノの細い顎先を掴んで振り向かせ、驚いたように開いた唇に、自分のそれを重ねた。
本当はこんな強引なキスしたくないのに…