第29章 Another dancer…【Extra edition】
「どうせだから、飯でも食ってく?」
渋滞を抜けたところで、助手席でウトウトし始めたニノに声をかける。
「え、俺、あんまお腹空いてないかも…」
普段から食にはあまり興味を示さないニノだから、放っておけば何も食べずに一日を過ごすことも少なくはない。
俺はそんなニノが心配で仕方ないんだ。
何せダンサーは体力のいる仕事だからさ…
一緒にいる時くらいは、ね…?
「俺が腹減ってんの。だから付き合ってよ」
「分かった、付き合うよ。あ、じゃあさ、俺に奢らせてよ」
「えっ? ニノ…が…? マジで言ってる?」
「マジに決まってるでしょ?」
ニノの口から出た意外な一言に、思わずアクセルとブレーキを踏み間違えそうになる。
だって、自他ともに認める“ドケチ”で有名なニノが、“奢る”なんて…
「ねぇ、明日大雨でも降るんじゃない?」
うん、それくらい珍しいことで…
「何それ…、俺が奢るって言ったら、そんなに変?」
途端に顔をパンパンに膨らませるニノに、俺は無言でコクコクと頷いて見せる。
するとニノは、
「あ、そ…。せっかく、ジッポのお礼しようと思ったのに、やめた…」
プイッとばかりに窓の外に顔を向けてしまった。
そんな、たまに見せる子供っぽいシグサも、俺にとっては“可愛い”の対象になるんだよな…
「うそうそ、嬉しいよ」
だからこっち向いて?
「ね、何奢ってくれんの?」
ニノと一緒なら、
「相葉さんは何食べたいの?」
別にコンビニ弁当でも全然OKなんだけどさ…
つか、
「お、俺は…」
飯よりも、本当はニノが食べたい…
なんて言ったら怒るんだろうな(笑)
「あ、でもあんまり高いのはダメだからね?」
「はいはい、贅沢は言いませんよ(笑) 」
言いながらニノの頭を撫でてやると、ニノが視線だけをこちらに向けて、少し照れたように笑った。
ヤバっ…、心臓痛いっつーの(笑)