第29章 Another dancer…【Extra edition】
車を走らせ着いたのは、高校時代の同級生増田が経営するアンティークショップ。
日本の物は勿論、外国製のアンティークな雑貨が、決して広くはない店の中に、所狭しと並べられている。
その中を、ニノの手を引き、脇目も振らず奥へ進んで行くと、
「よっ、久しぶり」
レジカウンターの向こう側で、ファッション雑誌片手に、いかにも暇を持て余した雰囲気を醸し出す男に声をかけた。
「えっ、あ、雅紀じゃん! 久しぶり、どうしたの、珍しい」
俺も陽気だと言われることが多々あるけど、この増田って奴も相当陽気な男だ。
「実はさ、友達がプレゼント見たいって言うからさ…」
「へー、そうなんだ? で、何か決めてる物はあるの?」
増田の雰囲気に戸惑っているのか、すっかり俺の背中に隠れてしまったニノを、増田が身を乗り出して覗き込む。
でも自他共に認める内弁慶のニノは、まるで無反応で…
「あ、あのさ、お父さんの誕生日プレゼントなんだけどさ…、ね、そうだよね、ニノ?」
俺の問いかけには、どうにか頷いてくれるけど、それ以外は増田がどれだけ問いかけようと、完全スルー。
「ふーん、お父さんね…。あ、お父さんて幾つの人なの?」
「えっと…、54だっけ…?」
「…うん」
「そっか〜、じゃあさ…」
俺自身は見慣れた光景であっても、初対面の増田にとっては、失礼極まりない態度のニノを、増田は嫌な顔一切見せることなくカウンターから出ると、店内に流れるBGMに合わせ、ダンサーよろしくステップを踏みながら店内に目を走らせた。
それには流石のニノも驚いた様子で…
「ねぇ、あの人もダンサーなの?」
増田と俺を交互に見ながら、小さな声で呟いた。
「昔…まだ高校生の頃、俺達ストリートで踊ってたんだ」
「えっ、雅紀が? 嘘でしょ? 意外だ…」
ってさ…、俺にストリートダンサーしてた過去があるのが、そんな驚くこと?