第29章 Another dancer…【Extra edition】
ニノの手を握ったまま空港を出て、俺の車に乗り込む。
流石にこの時ばかりは手を離してしまったけど、ニノがシートベルトを締めるのを確認した俺は、すぐさまニノの手を再び手中に納めた。
「ねぇ…、そこまでしなくても俺逃げたりしないし…」
ニノが唇を尖らせる。
分かってるよ…、もう二度とニノがどこかへ行ったりしないってことは、ちゃんと分かってるつもり。
じゃなきゃ、ニノは近藤さんの養子になんかならなかっただろうし…
でもさ…、不安なんだよ…。
ニノには俺の気持ちなんて分かんないだろうけどさ…、でも翔ちゃんはずっとこんな気持ちを抱えてたんだな…って思うと、胸が苦しくなるよ。
「あ、ねぇ、俺寄って欲しいトコあるんだけど…、いい?」
「いいけど…、どこに?」
「実はさ、もうすぐ誕生日なんだ、お義父さんの…。それでプレゼントを買いたくて…」
ハンドルを回しながら、横目でチラッと助手席のニノを見ると、ニノはちょっとだけ照れくさそうにしていて…
ああ、そうか…
産まれた時から施設で育ったニノには、今まで“親”と呼べる存在がなかったから、ニノにとって初めて出来た「お義父さん」は、きっと何者にも変えられない大切な人なんだろうな…
「分かった。で、何を買うかもう決めてるの?」
ニノの膝の上で握つた手に軽く力を込める。
「うーん…、それが…何をプレゼントしたら喜んでくれるのか、俺分かんなくて…」
分からなくて当然なのかもな…
大切な人にプレゼントなんて、多分今までにしたことないだろうから…
「分かった。じゃあさ、俺に任せてくれる?」
「い、いいけど…」
「OK! そうと決まれば…」
俺は信号が青に変わったタイミングでアクセルを踏み込み、大きくハンドルを左に切った。