第29章 Another dancer…【Extra edition】
「行っちゃった…ね…」
段々小さくなって行く飛行機を見送りながら、隣でポツリ呟く寂しげな声…
俺はその小さな肩をそっと抱き寄せた。
必ず戻って来ると分かっていても、親友が旅立って行く寂しさは、俺にも分かるから…
なのに、だよ?
「もう…、どさくさに紛れに何してんの?」
って…、なくない?
「ど、どさくさに紛れって…、人聞き悪いこと言うなよ…。俺はただニノが泣いてると思って…」
「は、はあ? 俺泣いてなんかないし…」
えっ…、だって鼻、グスッてしてたじゃん…
絶対泣いてると思ったんだけとな…
「ほら、さっさと劇場戻るよ? じゃないと夜の公演間に合わなくなっちゃう」
肩に回した俺の手を払い、ターンを決めるみたいな鮮やかな身のこなしで俺の腕からすり抜けて行くニノ…
その背中はやっぱり寂しげで…
「待てってば…」
俺はニノの手を咄嗟に掴むと、キュッと握り締めた指をそっと解き、そこに自分の指を絡めた。
「ちょ、ちょっと…、人が見てるから…」
「いいからいいから。さ、急ごうか?」
人目が気になるのか顔を真っ赤にして周りをキョロキョロ見回すニノが可愛い。
手を強引に引き、強風が吹き付ける展望デッキを後にした。
搭乗客やら、見送り客やらでごった返す中を、ニノの手を引いてすり抜ける。
こんなことも、以前の俺なら全く想像も出来なかったこと…
なんたって、惚れた相手に「好きだ」の一言も言えなかったんだからさ…
…って、正直言えばまだ言えてないんだけどさ…
でもそんな俺を変えてくれたのは、やっぱりあの二人の存在なんだと思う。
あの二人が俺に勇気を持つことの大切さだったり、人を愛することの喜びや…勿論、それには痛みも苦しみも伴ってたりするんだけど、そんなこともあの二人は、身をもって俺に教えてくれたような気がする。
じゃなかったら、俺は未だにニノにこうさはて触れるすら出来ていなかっただろうし…
ニノからは拒否られてばっかなんだけどさ(笑)
ま、それも照れ隠しってことは分かってるから気にしない。