第1章 Stage…
そうして客席のボルテージが頂点に達した頃、俺は漸く唯一身に着けていたホットパンツを脱ぎ捨てた。
湧き上がる歓声に、身体が震えた。
俺が存在するべき場所は、このステージの上なんだと思い知らされる。
細かいステップでリズムを刻み、伸ばした指先に全神経を集中させた。
もっとも…
俺がどんなに優雅に舞おうと、激しく身体を揺らそうと、観客はそんなこと気にしちゃいないけど…
観客が見ているのは、ゆるゆると頭を擡げ始めた俺の中心と、足を開いた時に覗く秘部だけ…
それでも俺はかまわない。
俺のためだけに用意されたステージで、俺だけを照らし出すスポットライトを全身に浴び、蝶が鱗粉を撒き散らすように汗を飛ばすこの瞬間が…
この瞬間だけが、何よりも幸せだと感じることが出来るから…
凡そ10分程度のステージを終え、舞台袖に捌けた俺を、翔が抱き留める。
「お疲れ様。良いステージだった」
背中に回った手が、汗ばんだ背中を撫でる。
「シャワー浴びて、先に帰ってろ」
「…分かった。キス、してくれたらな?」
翔の胸に埋めた顔を上向かせると、俺はキスを強請るように瞼を閉じた。
すると小さな笑いを漏らして、翔の唇が俺の唇に重なった。
触れるだけのキスを交わして、翔の腕からすり抜けた俺は薄暗い階段を駆け上った。
「口紅、着いてんぞ…」
振り向き様にウィンクを一つ投げかけながら…