第4章 Asymmetrical…
イントロが始まり、ステージ上へと飛び出した俺達に、信じられないボリュームの拍手と歓声が湧き上がる。
と同時に、今まで味わったことのない緊張感と、そして何とも言えない高揚感に身体が震える。
なんだこれ…、たまんねぇ…
「智?」
一瞬頭の中が真っ白になり、あろうことかステージ上で立ち尽くしてしまった俺を、ニノが肘で小突く。
「あ、ああ…悪ぃ…」
俺は慌ててニノがさっき踊って見せてくれたフリを頭の中に思い起こすと、そこに自分の中で作り上げたフリを重ね合わせた。
そうなればもうこっちのもんだ。
周りの歓声も、そして視線も…何一つ意識することはない。
溢れる音楽に身を委ねるだけだ。
ニノらしい、ポップでキャッチーな曲に合わせ、普段は絶対に踏まないであろう、アイドル張りのサイドステップを踏んだ。
その度に裾がヒラリと捲れ上がり、その拍子に覗いた太腿に観客の視線が釘付けになる。
でもコイツらの求めてんのは、その奥…
小さな布に包まれた、俺が男であるという証…、それだけだ。
別にそれでも構わないさ…、こうして踊ってられるなら、俺はそれでいい。
「気持ちいいね」
ニノが俺に顔を擦り寄せ、小声で囁く。
その光景が、俺達があたかもキスでもしてるかのように写ったのか、観客から黄色…くはねぇが、歓喜の声が上がった。
それに気を良くしたニノが、俺を正面から抱きしめ、小振りなケツを揺らしながら、ゆっくりと腰を落として行った。
つか、こんなの予定にはなかったけど…
「俺に合わせてくれるんでしょ?」
客からは見えない角度で俺の耳に囁き、不敵なまでの笑顔を浮かべた。
「分かったよ…」
仕方ねぇ…、ここは黙ってニノに合わせるしかないか…